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開発の現場

何人で、どう分担して、いくらで作るか。作る側の景色でまとめた6章。

01 / 役割分担

開発する上での役割分担

ゲームは一人では作れない。区分の名前は会社で違うが、だいたいこの形。

DIR・PRD・PMディレクター/プロデューサー/PM方向と品質を決める。予算・スケジュール・人員を管理する。全体を見る
企画
PLN・GDプランナー/ゲームデザイナールールと体験の設計。仕様書、試作
設定
ARTコンセプト/2D世界観・キャラ・背景の設定画
制作/実装
MDL・RIGモデラー/リガー見た目と、動かすための骨組み
ANMアニメーター動きと感情
PRGプログラマーゲームとして動かす
SFXサウンド効果音とBGM
VFX・UIエフェクト/UI演出と画面
SFX から ANM へ戻って、また回る
検証
QA品質・検証遊べる商品にする
TAテクニカルアーティスト設定〜実装の間をつなぐ。ツールと効率化で全体を支える
※検証や実装で問題が出たら、制作・企画へ差し戻し。行き来しながら完成させる
視点

各セクションはバトンをつなぐリレー。
大切なのは「次の人が作業しやすいバトン」を渡すこと。
例:骨格(リグ)を理解して、アニメーターが動かしやすいモデルを作る。
自分の専門だけでなく、隣の職種を知る。それが現場で求められる第一歩。

開発はチーム戦。ホウレンソウで、お互いの見ている景色を確かめ合いながら進む。

02 / 規模

1本を作る規模

1本のゲームに、何人が、何年、いくらかけるか。小・中・大の目安。

人数
期間
開発費
実例
いま
小規模インディー
1〜10人
数か月〜2年
数百万〜1億円台
『8番出口』(2023年)
1人・約9か月(構想6+制作3)
費用は公表されていない
↑ 数が増えている
中規模AA
20〜100人
1〜3年
数億〜20億円前後
『パルワールド』(2024年)
3〜4人 → 数十人・約3年
会社の資金 約10億円をほぼ使い切った
↓ 数が減っている
大規模AAA
200〜500人
3〜5年
40億〜数百億円
CESA が示した AAA の一例
約300人・3〜5年
100億〜1,000億円
内訳:アート130人・プログラマー90人・ゲームデザイン40人・プランナー25人・サウンド12人(QA 等は別)
↑ さらに大きく

幅は、公表されている数字と実例をもとにした目安。人数は、いちばん多い時期の人数。外注・宣伝費は含まない。
開発費は、ほぼ「人数 × 期間」で決まる。1人1年 ≒ 約900万円(平均年収 約674万円に、会社負担の保険とオフィス代を足した概算)。

視点

人数が増えるほど、一人の担当は狭く深くなる。少人数ほど兼任で広くなる。
覚悟を決めて大きく打って出るか、コスパを意識して小さく進むか。
どちらを選ぶかは、各社のお財布事情と相談しながら決まっていく傾向にある。
ただ、人数が多くても少なくても、「連携力」の高い人材の需要は高まる一方。

大型はより大きく、小規模はより多く。真ん中が減っている。
人数が増えるほど、分業と連携の重みが増す。

03 / 変化

開発の変化

20年で変わったことと、いまの風向き。

変わったこと

道具
  • エンジンが無償に:個人や小さな会社でも作れる(Unreal・Unity は2015年から)
  • AI も道具に:権利と雇用のルール作りが進む
作り方
  • 大型化と長期化:人数・期間・開発費が増える
  • 大型は300人規模:3〜5年かかるのも珍しくない
  • 海外市場が前提:多言語・同時発売・各国のレーティング
売り方
  • ダウンロードが主流:任天堂 53.5%・カプコン 約85%
  • 運営が売上の主役:発売後も続くライブサービス(EA は売上の74%)
  • 基本無料は続ける世界:運営費 1億円/月・50人の例
  • 止めるだけで大損失:作りかけの廃棄で二百億円超の例

いま、どう変わっているか

追い風(プラス)
  • 世界の市場は伸びている:2025年は9.1%増、2026年も伸びる予測
  • 小規模でも世界に届く:エンジンは無料、Steam には100ドルで出せる
  • 作り手と支援が増えている:インディーが増え、出版社や国の支援も広がる
  • 人が足りない=出番が多い:大型は300〜500人規模。高度な開発人材が不足
向かい風(マイナス)
  • 開発費が上がり続ける:世界向けの大型は100億円以上。モバイルも10年で約7倍
  • 真ん中が減っている:中規模が減り、大型か小規模かに分かれる
  • 日本のスマホゲームは頭打ち:アプリ市場は2021年から3年続けて減り、横ばい
  • モバイルの主役は中国勢:PC+モバイルの海外売上は、中国が日本の約6倍(2021年)
  • 日本市場の新作ヒットも海外勢:2024年上半期に目立った新作6本のうち5本
  • 新作は絞られる:スクエニは「量から質」へ。スマホ向けは当たる割合を上げる方針
  • 売れるのは一部:Steam には年に約1.5万本。売上は一部の作品に集中

費用が上がる理由:求められる品質が上がり、人数と時間が増え、技術者の人件費も上がった。

作る量も、続ける期間も増えた。だから分業と連携が、いっそう要る。

04 / スキル

求められるスキル

職種ごとの道具と、全職種に共通する力。

職種主な道具いま求められること
TA/RIGテクニカルアーティスト/リガーMaya/3ds Max・Python・C#/C++
Unity/UE・シェーダー(HLSL)
ワークフローの構築とツール開発
AI の取り込みとニーズの汲み取り
ANM3DアニメーターMaya・MotionBuilder・3ds Max
Unity/UE・Photoshop
動きへの関心と観察の積み重ね
他の職種と組む力
VFXエフェクトMaya・After Effects・Photoshop
Unity/UE・Houdini
発想の引き出しの多さ
表現のテンポ感
UI/UXUI/UXデザイナーPhotoshop・Illustrator・Figma
Unity/UE・After Effects
多様な機器をまたぐ使いやすさ
気づかれない便利さの作り込み
PLNプランナーExcel・PowerPoint
Unity/UE・SQL(数値の集計)
仕様書への落とし込み
開発者を迷わせない示し方
CHR MDLキャラクターモデラーMaya・ZBrush・Substance Painter
Unity/UE・Photoshop
造形力
新しい作り方を見つける探究心
ENV MDL背景・プロップMaya・Blender・ZBrush
Substance Painter・Unity/UE
写実性と美術の感性
新しい作り方を見つける探究心
全職種に共通する力
ユーザー視点でモノを考える力
  • 作ったものが、ゲームの中でどう見えるかを実機で判断する
臨機応変な判断と決断力
  • 品質を出すために最適化する
  • イレギュラーに最善策を見つける
  • 自分から動いて課題を解決する
伝える力
  • ホウレンソウを欠かさない
  • 他の職種と円滑に連携する
全体性
  • 別の職種を意識する(チーム戦の意識)
視点

デザイナーは、相手の「なんかかゆい」ところを掻いてあげる人。
質問を重ねてヒントを集め、形にする。引き出しは多いほどいい。
言われたことだけをする「オペレーター」は、現場では褒め言葉にならない。

道具や開発環境は変わっても、人の感性と、人と関わる力は変わらない。
どれだけ便利な道具が生まれても、使うのは人。問われるのは「何を使うか」ではなく「誰が使うか」。

05 / お金

お金の話

ゲーム業界の会社員(新卒・中途 × 中小・大手)と、フリーランス(梅・竹・松)の7つを、同じ物差しで並べた目安。

会社員・新卒1年目・大卒の初任給会社員・中途社員の平均(35〜41歳)フリーランスゲームのモーション案件
中小大手中小大手安めの案件一番多い額高めの案件
月の収入上:平均
下:各社の幅
約22万円20〜25万円約31万円28.8〜33万円約41万円33〜53万円約82万円82万円前後45〜55万円60万円65万円〜
年の収入上:平均
下:各社の幅
約270万円240〜300万円
+賞与
約370万円346〜396万円
+賞与
約490万円397〜635万円約980万円982〜985万円540〜660万円720万円780万円〜
賞与年2回が多い初年度は少なめ(夏は寸志など)年2回が多い上の年の収入に含まれるなし
実質手取り(目安)1か月あたり約19万円17〜21万円約26万円24〜28万円約32万円26〜41万円約59万円59万円前後31〜37万円約39万円42万円〜
健康保険会社と半分ずつ払う病気で休むと、給与の約3分の2が出る国民健康保険。全額を自分で払う休んでも手当は出ない
年金厚生年金。会社と半分ずつ払う保険料18.3%。国民年金に上乗せされる国民年金のみ月17,920円(定額・2026年度)
雇用保険失業・育休の給付あり本人の負担は給与の0.5%なし
労災仕事中のけがあり保険料は会社が全額を払う任意で特別加入できる保険料は自分で払う
仕事のルール労働基準法などが守る労働時間・休日・解雇の決まりフリーランス新法(2024年11月から)条件は書面で明示・報酬は受取から60日以内
退職金制度がある会社(全産業)約7割約9割約7割約9割なし自分で積み立てる
有給休暇中途は全産業入社半年で10日法律の最低。大手は15日の例も年17.4日取得 11.3日年18.5日取得 12.8日なし休むと収入が減る
表の数字の出どころと前提

会社員は、ゲーム会社の公表値の平均。新卒=初任給(大卒・2026〜2027年)、中途=有価証券報告書の平均年間給与。
大手=カプコン・コナミ・セガ・スクウェア・エニックス・コーエーテクモ・任天堂(新卒5社・中途2社)。
中小=日本一ソフトウェア・トーセ・ケイブ・エディア・サイバーコネクトツー・シリコンスタジオ(新卒4社・中途5社)。
中小の年収は、有価証券報告書を出している6社の値。公表の義務がない小さな会社は、これより低いこともある。
新卒の月は基本給など(固定残業代を含む会社もある)。専門卒は同額〜2万円低い。中途の月=年÷12(賞与・残業代込み)。
フリーランスは、仲介会社に掲載中のゲームのモーション案件(業務委託56件・2026年9月)の月額。多くは募集の上限額。
梅=安めの約4分の1(55万円以下)、竹=一番多い60万円、松=高めの約3割(65万円以上)。別の集計でも平均は月61.9万円。
受けられるのは、実務経験3〜5年以上が目安。年=月×12(仕事が途切れない場合)で、経費・税・保険料を払う前の額。
実質手取りは、税・社会保険料(フリーランスは経費1割も)を引いた概算。東京・独身・40歳未満、フリーランスは青色申告で計算。
新卒の手取りは、住民税がまだ引かれない1年目の額(2年目から月1万円ほど減る)。
新卒の手取りには賞与を含まない。中途は、年収に賞与が入っている。
退職金と中途の有給休暇は、ゲーム業界だけの統計がないため全産業の値(中小=従業員30〜99人)。

業界全体の目安

今の水準
  • 開発者の年収:平均 674万円・中央値 約600万円(CESA の調査・339人・2024年)
  • 新卒の水準は別:初任給は月20〜33万円(上の表)。ここから何年もかけて上がる
  • 働く時間:通常期は週44時間、繁忙期は52時間を超える
  • 勤務地:関東78.8%・近畿17.4%。都市部に集まっている

回答者は25〜44歳が7割強で、真ん中は30代前半。経験を積んだ人を含む額。
表の各社の数字は、平均だけが公表されている。

待遇は上がっている
  • 初任給は上がり続けている:カプコンは2025年に月30万円、セガは2026年に大卒33万円へ
  • 大手の年収も上がっている:カプコンの平均年間給与は、4年で713万円から985万円に
厳しさも増している
  • 求められる水準が上がる:機器の進化で、高度な開発人材が求められ、足りていない
  • 学校と現場に差がある:大手の新卒研修は、短くて半年、長いと数年かかる
  • 入口は作品と試験:新卒でも、作品・プログラミングテスト・企画書で選ばれる
  • 学び続ける前提:技術の変化が速く、必要なスキルの調査も1〜2年で古くなる

作品と試験はスクウェア・エニックスの新卒採用の例。それ以外は、業界団体 CESA が国に出した提言(2026年)。

都市部で一人暮らしをしたら(かんたん試算)

生活費の内訳(家賃以外)合計 14.5万円
手取り(1か月)
24万円
家賃
7.7万円
生活費(家賃以外)
14.5万円
残り
1.8万円

手取り=月給から税・社会保険料を引いた額(賞与なし・住民税ありで計算)。賞与があれば、その分が上乗せになる。
生活費の既定値=34歳以下の一人暮らしの会社員などの平均。自分の暮らしに合わせて動かせる(年収200〜300万円の人なら合計で約12万円)。
税・保険料は、東京・独身・40歳未満として計算した概算。

視点

「相場」は一言では言えない。単価も給料も、会社ごとのお財布事情で決まる。
比べる相手は、人の年収ではない。自分の実働工数(どれだけ手を動かし、何を仕上げたか)を伝えられるかどうか。
まずは、自分の身の程を知る機会をつくること。

社会保障の費用は、会社員なら会社が半分を払い、フリーランスは全部を自分で払う。
数字だけに惑わされないよう、お金の仕組みへの理解を深めておく。

06 / 門を叩く

ゲーム業界への門を叩く

何を用意して、どう準備するか。各社の募集要項に書かれていることから。

新卒採用学科・学歴を問わない会社もある

書類と作品の選考、複数回の面接。

締切は一度ではなく随時募集もある。

応募は会社の窓口か就職サイト経由。

インターン・アルバイト現場を見る入口

インターンは時期を決めて募集される。

アルバイトはデバッグや開発の補助から。

書類選考と面接1〜2回で始められる。

中途(経験者)採用経験3年以上・5年以上など

職種ごとの募集で、必要な経験が書かれる。

実績=関わった作品と担当範囲。

転職経験者は半分を超える。

3〜5年の経験で独立する道もある。

フリーランス経験3〜5年以上が目安

会社で経験を積んでから独立する人が多い。

相場はあくまで目安。合わせるものではない。

自分の実働がどれだけの価値かで考える。

作品集(ポートフォリオ)の作り方

伝わるもの
  • 技術:見れば分かる
  • 姿勢:作品に出る
  • 人柄:作品集の全体から伝わる
見られていること
  • 熱意:上手さより、本気で作ったかが伝わる
  • 意図:何を見せたいか、なぜ作ったかが読み取れる
  • 個性と感性:こだわった所に、その人らしさが出る
  • 丁寧さ:構成・並べ方・文字づかいまで見られている
書き添えること
  • 担当範囲:共同制作は、自分がどこを作ったかを明記
  • 課題か自主制作か:学校の課題だけでは判断が難しい
  • 作り方:使ったツールと環境・選んだ理由・制作期間
  • 狙い:その作品でアピールしたい点を一言
見る人への配慮
  • 要点から:忙しい中で、時間を割いて見てもらう
  • シンプルに:何をやりたいか・何ができるかが一目で分かる
  • 気配り:ファイルの綴じ方や梱包まで印象に残る
  • 手元に残す:出した作品や書類は返ってこない会社もある

避けたいのは「なんとなく作った」「課題をこなしただけ」「やっつけ感」。細部まで見られている。

心構えと進め方
動機は自分の言葉で
  • 憧れた作品、作る楽しさ、喜ばせたい気持ち
  • その動機を、作品と志望職種に結びつける
入ってからも学ぶ
  • 学校で学ぶ内容と、会社が求める水準に差がある
  • 大手の新卒研修は半年から数年かかる
面接で作品を語る
  • 面接は1〜4回。適性検査を置く会社もある
  • 作った理由と工夫を、自分の言葉で話す
入口も締切も一つではない
  • 随時募集や、年に何度も締切がある
  • 別の業界で働いてから入った人もいる
視点

大手(数百人)は担当が細かく決まり、狭く深く。教育制度も整うが、「ゲーム全体を作っている」実感は薄くなりがち。
中小(数十人)は兼任が多く、幅広く。若手のうちから重要な仕事を任されるが、自分で学ぶ主体性が要る。
どちらが上でもない。一つを極めたいか、全体を知りたいか。

作品は「何を作ったか」より「どう作ったか」が伝わるように。
入口も締切も一つではない。挑める回数は自分で増やせる。

出典

以下のリンクや企業の公表資料を参考にまとめています。2026-09-23 時点で確かめた内容です。

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