知る

産業のしくみ

誰が作り、どう届き、どこでお金が生まれるか。産業の側の景色でまとめた7章。

01 / 流れ

ゲームが作られて、ユーザーに届くまで

外部のパブリッシャーとデベロッパーが組み、デジタル販売する場合。契約や出資の形は、案件ごとに違う。

企画・出資
資金・依頼
作る
完成したゲーム宣伝と販売登録はパブリッシャー
届ける
配信
遊ぶ
国内のゲーム産業で働く人は、約20万人日本の人口の約0.16%(およそ600人に1人)推定・出典:CESA ゲーム産業レポート2025/人口は 1億2,268万人(2026年8月1日現在の概算値)
ゲームを作る・売る会社約5.8万〜8.3万人(全体の3〜4割) ハードメーカー・開発兼パブリッシャー・開発スタジオ
CESA の区分では「ゲーム基幹企業」
そのまわりで支える会社約13万人(全体の6〜7割) 開発サポート・周辺機器・流通・小売り・アミューズメント・玩具・情報発信メディア など
CESA の区分では「その他関連企業」
番外:ほかの仕事とくらべると?
看護師1.11%・約90人に1人
小・中・高校の先生0.73%・約140人に1人
医師0.28%・約350人に1人
警察官0.21%・約470人に1人
自衛官0.18%・約560人に1人
ゲーム産業0.16%・約600人に1人
消防職員0.14%・約730人に1人
弁護士0.04%・約2,600人に1人

日本の人口に対する割合。ゲームは産業全体で働く人の数、ほかは職業ごとの人数なので、目安として。

02 / 仕事

ゲーム制作の工程

一般化した工程。職種名や担当範囲は、会社や規模で変わる。

01企画・検証

誰に何を届けるか

企画書・市場調査

02試作

面白さと実現性

試遊版・制作見積り

03本制作

素材と機能を統合

実装・CG・音響

04品質・発売

遊べる商品にする

QA・翻訳・審査

05運営・改善

遊ばれ方を知る

修正・分析・更新

プロデューサー・ディレクター・プランナー(ゲームデザイン)
プロジェクトマネージャー・制作進行
コンセプトアート
QA・デバッグ
運営・分析
エンジニア・プログラマー
モデラー・アニメーター・VFX・UI・サウンド
宣伝・営業・コミュニティ対応
ユーザーテスト
追加開発
ローカライズ・レーティング申請

予算・時間・人員を調整して、チームで完成させる。

職種の名前は各社の求人の区分にならった。各工程との対応は、現場経験にもとづく整理。

03 / お金

お金(売上・開発費・利益)の話

デベロッパーにお金が入る道は、2つ
① 売って稼ぐ自社販売・販売委託
  1. ユーザーが払う購入代金・ゲーム内課金
  2. ストアで精算税・返金の調整、契約に基づく分配
  3. 販売主体に入る自社販売なら開発者自身、委託なら契約先

売れた分だけ入る。売れなければ入らない。

② 作って受け取る受託開発
  1. 発注者が頼む作ってほしい会社。多くはパブリッシャー
  2. 工程・検収ごとに開発費を払う
  3. デベロッパーが受け取る売上ではなく、開発代金

売れても売れなくても、決めた開発費が入る。
売上に応じた報酬が付くかは、契約による。

契約の形いろいろ(誰がお金を出し、どう受け取るか)
自社開発・自社販売自分で作り、自分で売る。リスクも利益も自社。
パブリッシャー出資パブリッシャーが開発費を出す。回収した後に利益を分ける形が多い。
受託開発頼まれて作り、開発代金を受け取る。
共同開発複数の会社で、費用と作業を分担する。
IPライセンス原作やキャラクターを借り、利用料を払う。
レベニューシェア売上を、決めた割合で分け合う。
自己資金・クラウドファンディング自分の資金や、支援者から集めた資金で作る。
①「売って稼ぐ」を、もう少し細かく見る

以下の3つは、自分たちで作って売る場合の話。
②の受託開発では開発費が工程ごとに入るので、ここに出てくる「回収」は発注者側の話になる。

売れた金額の内訳

ユーザーが支払う金額に対して、以下のような内訳で分配される(幅はイメージ・実際の比率ではない)。
比率は、契約・機器・販売地域・パッケージ版かデジタル版かで変わり、契約内容は通常は非公開。一つの固定値では教えない。

消費税
届ける途中で引かれる小売・流通マージン、プラットフォーム手数料、製造費
売るために使う宣伝費、IP使用料
作る・続けるために使った開発費、外注費、サーバー・運営費、会社の管理費
利益契約に応じて分配される
発売までは、お金は出ていくだけ 形はイメージ・実測値ではない
回収に必要な本数を動かしてみる
10億円
4,000円
10億円 ÷ 4,000円 =約25万本

「1本あたり回収に使える額」は、値引き・返金・手数料などを引いた後の仮定。定価ではない。

実際、いくらかかる?(固定費の概算)

単価(公開されている数字)

  • ゲーム開発者の平均年収 674万円2024年の個人年収・CESA の調査(339人)
  • 会社が別に払う保険料など 給与の約15%健康保険 9.85% と厚生年金 18.3% の半分、雇用保険 0.85%、子ども・子育て拠出金 0.36%(東京・2026年度)
  • 東京都心のオフィス賃料 23,647円/坪・月都心5区の平均募集賃料・2026年8月
  • Maya(3DCGソフト)345,400円/年1ユーザー・公式販売代理店の価格
  • Unreal Engine(ゲームエンジン)総収益100万ドルまで無料超えた分に 5% のロイヤリティ
  • Steam の登録料 1タイトル 100ドルSteam Direct

概算:20人で2年作ると 人数・期間・広さ・本数は仮定

  • 人件費 約3.1億円674万円 × 1.15 × 20人 × 2年
  • オフィス 約3,400万円60坪(1人3坪)× 23,647円 × 24か月
  • Maya 約690万円10本 × 2年

合計 約3.5億円。何も売れなくても、毎月 約1,460万円が出ていく。

PC・開発機材・外注・宣伝・QA・ローカライズは、この外。
固定費の9割は、人の給料と会社負担分。

最終的に黒字でも、発売前の資金は必要になる。
黒字にならなければ、会社は続かず、次の作品も作れない。利益があってこそ、産業は成長する。

計算は単純化した採算モデル。全ストア共通の手数料率・会計上の利益を示すものではない。「契約の形いろいろ」の用語は、文化庁のライセンス契約の説明を参考にした。

04 / 売り方

いろいろな売り方

まず言葉を4つの軸に分ける。混ぜて話すと、議論がかみ合わなくなる。

何で遊ぶか
  • コンソール家庭用ゲーム機
  • PC
  • モバイル

同じゲームが複数の機器で出ることがある。

どう支払うか
  • 買い切り
  • F2P基本無料
  • 月額課金
  • 広告収益

F2Pでも、開発と運営には費用がかかる。

どう続けるか
  • ライブサービス更新・イベントを続ける運営

有料作品にもある。F2Pの同義語ではない。

規模の呼び方
  • AAA大規模・高予算の作品

世界共通の基準はない。目安は開発費40億円〜・300人規模・3〜5年。

売り方ごとの「お金が入るタイミング」 横=時間・縦=入ってくるお金。形はイメージ

買い切り

本編の販売

発売時に売上が集中する。

DLC(追加コンテンツ)

追加分の販売

本編の後にも山を作る。

F2P(基本無料)

アイテム・キャラ課金

無料で人を集め、
課金で稼ぐ。

ライブサービス

シーズン・課金・追加要素

長く運営する前提。
更新のたびに波が来る。

サブスクリプション

月額などの利用料

遊び放題の定額制。
収益は契約条件しだい。

広告型

広告収入

主にモバイル。
遊ぶ人の数に連動する。

UGC(ユーザーが作る中身)

作った人と運営で分配

ユーザーが中身を作る。

図の読み方点線=発売の時点。
山の形=稼ぎ方のクセ。
「基本無料」の仕組み
1「無料」は、ただではない

ユーザーは、払わずに始められる。
作る側には、毎月の支払いが続く。

2毎月かかる支出
  • 人件費開発・運営の人
  • サーバーの維持
  • 顧客対応
  • 追加コンテンツの開発
  • 広告人を集め続ける

人件費は、発売後も続く。

3続けるための工夫
  • 一部のユーザーの課金アイテム・キャラ
  • 広告収入
  • 定期的な更新・イベントまた遊びに来てもらう
  • データを見て直す遊ばれ方に合わせる

払う人は一部でも、
遊ぶ人が多ければ成り立つ。
だから、集めて、飽きさせない。

利益が出て初めて、運営は続き、次の作品が作れる。「無料で遊べる」の裏では、稼ぐ工夫が毎日回っている。

買い切りが消えたわけではない。複数の売り方が、同時に存在している。

支払い方の分け方は Apple のストアの区分。ライブサービスの意味は EA の年次報告、UGC の分配は Roblox の説明による。
スマホゲームでお金を使う人は33%(CESA ゲーム白書)。1日あたりの課金率が4.4%の会社の例もある(米 Playtika)。

05 / 歴史

ゲーム業界のざっくり年表

帯の左端は、その遊び場が加わった代表的な節目(厳密な始まりの年ではない)。どの帯も今まで続いている。
いちばん上の帯は、ゲーム業界に影響した社会の出来事。
印の色は衝撃の大きさ 小 / 注意

1970 1980 1990 2000 2010 2020 現在
社会の流れ
アーケード
家庭用
携帯機
PC
モバイル
+9の現場歴2002〜
1970sアーケード初期の家庭用
1980sファミコン家庭用市場の確立
1990s16bit・3DCD-ROMPlayStation
2000sオンライン化Xbox 参入
2010sスマホ・SteamF2P配信文化インディーDL 販売へ移行
2020sライブサービスサブスク・UGCクロスプレイ生成AI
日本の勢い世界市場の中心の一つ存在感が下がる再適応
年表を文字で読む
時期
確認できる出来事
産業の変化を考える視点
1970年代
1972年:米国で Pong が登場
店舗で繰り返し遊ぶ体験が事業になる。
1980年代
1983年:ファミコン発売
1989年:ゲームボーイ発売
家庭と持ち運び先へ、遊ぶ場所が広がる。
1990年代
1994年:日本で PlayStation 発売
3D・CD-ROM を活用した制作を考える。
2000年代
2004年:DS、2006年:Wii 発売
2008年:App Store 開始
操作方法と流通の入口が多様化する。
2010年代
2017年:Nintendo Switch 発売
据置・携帯の境界を越える設計が現れる。
2020年代
2024年:世界コンテンツ市場でモバイルが約6割
複数の機器・売り方を前提に市場を見る。

「アーケードが消え、家庭用が消えた」という交代劇ではなく、遊ぶ場所の層が増えた。
一本を売って終わりの世の中から、遊ぶ人と長くつながる世の中へ。

代表的な節目を選んだ導入年表。

06 / 日本と世界

市場を見る

世界の需要
2024年の世界ゲームコンテンツ市場
31兆42億円
前年比 5.0%増・4年間で約5割増
出典:CESA ゲーム産業レポート2025

%は世界市場に占める割合。PC は4年間で 59.7%増と最も伸び、家庭用を上回った。

国別の市場規模(2021年・主要6か国)

この6か国で世界の62.6%。
伸びが大きいのは新興国(2021→2026年の年平均、予測)。
東南アジア +17%・南米 +13%・中東・アフリカ +8%。
米国 +8%・中国 +2%・日本 0%。
東南アジアと南米は、2026年に日本市場に迫る見込み。

日本の市場
2024年の国内ゲーム人口
5,475万人
日本の人口の約45%
出典:CESA ゲーム産業レポート2025・人口は総務省

%は日本の人口に対する割合。複数の機器で遊ぶ人がいるため、3つを足すと全体を超える。

目安
家庭用の基盤:Nintendo DS 世界累計販売
1億5,402万台
任天堂公表・ハード台数
制作側の負担:カプコンの開発投資
10年間で約1.9倍
2025年 統合報告・一社の事例
数字を語る時の注意
  • 31兆42億円は、2024年が対象の CESA 推計。2026年の実績でも、世界ゲーム産業の全取引額でもない。
  • 円換算の増加には、為替と物価も関係する。実質的な需要増と言うには、換算方法や元の通貨での確認が要る。
  • カプコンの開発投資は一社の事例。日本全体・1作品あたりの予算・日米の費用差の証明には使わない。
  • 多国籍企業の売上を、そのまま「国内開発の実力」とはしない。
日本の立ち位置は、3つの時期で語られることが多い
1980〜90年代世界市場の中心の一つ
2000年代相対的に存在感が下がる
2010年代後半〜世界市場へ再び適応

日本が強いと言われる領域

  • 家庭用ゲーム機
  • 世界的なゲームIP
  • 家庭用向けの開発力

企業の例:任天堂・ソニー・カプコン・バンダイナムコ・スクウェア・エニックス

米国・中国が強いと言われる領域

  • PCプラットフォーム
  • モバイル
  • 巨大ライブサービス
  • UGCプラットフォーム

日本企業も、海外売上・PC・世界同時発売を重視するようになった。

日本は「ゲーム産業全体を支配している国」ではなく、「世界のゲーム産業で、代わりのきかない地位を持つ国」。
強さは、地域・機器・事業の役割ごとに評価する。

異なる期間・指標の数字を、棒グラフ等で直接比較しない。
「日本の強み」「家庭用の日本市場は世界の9.4%」は経産省の解説、海外展開・中国市場の伸びは CESA の提言による。3つの時期の区切りは、よく語られる整理で、出典はない。

07 / 課題

市場は大きくなったが、作る側は楽になっていない

遊ぶ人を新しく増やす段階から、すでに遊んでいる人の「時間とお金」を取り合う段階へ。

以前
自分たちの新作VS他社の新作

いま
自分たちの新作VS
他社の新作
+ 過去の名作+ 基本無料のゲーム+ 何年も続くライブサービス+ UGC+ 動画配信

様々な課題

作るコストが上がる
  • 開発の人数と期間は年々増え、一本あたりの費用がふくらむ
  • 人件費や宣伝費も上がり続けている(初任給の引き上げ、宣伝の大型化)
  • 途中で開発を止めるだけでも、二百億円を超える損失が出た例がある

一社の例:カプコンは「開発投資は過去10年で1.9倍。
開発の規模は年々大きくなり、期間も長くなっている」と説明している。

競争の形が変わる
  • ユーザーの時間は、他社のゲームだけでなく動画サービスとも奪い合う
  • 過去の名作が長く売れ続け、新作はその中で選ばれなければならない
  • 遊ぶ人と長くつながり続ける、運営の力が要る
人・技術・権利
  • 人材の確保が、会社の内外で課題になっている
  • 海外市場を前提にした開発(任天堂は売上の76%が海外)
  • AI の利用をめぐって、権利と雇用のルール作りが進んでいる
  • IP をゲーム以外(映画・グッズ・ロケーション)へ広げる動きが強まっている

市場全体は巨大化している。しかし、デベロッパーが成功しやすくなったわけではない。

各項目は企業の公表資料・公的資料の例で確認したもの。業界全体の統計ではない。

出典

以下のリンクや企業の公表資料を参考にまとめています。2026-09-23 時点で確かめた内容です。

出典の一覧を開く
  • 市場規模には「対象地域・年・通貨・集計範囲」を必ず添える。
  • 定義の違う数字(CESA と Newzoo 等)をそのままつながない。
  • 非公開の契約料率を、業界共通の数字として断定しない。